その刀剣男士の死は突然だった。
毎日元気に活動していたにもかかわらず、ある日突然倒れ、帰らぬ刀となった。
刀剣男士は手入さえ怠らなければ死なないと思い込んでいた審神者だったが、まさか人のように死ぬとは思えず、亡骸と折れた刀身は、調査のために政府預かりとなった。
亡くなった刀剣男士は、その日、戦はおろか遠征や内番にすら出ていない非番の日だったし、酷使した記憶も薄い。
では何故彼は死んだのか?
不気味な静けさと喪失感が、本丸中を支配した。
ある刀剣男士に異変が起こった。
亡くなった刀剣男士と同室だったへし切長谷部が、審神者の元から離れなくなったのだ。
へし切長谷部といえば主に執着しやすい傾向にあるというが、子の本丸の長谷部は普通だった。常に審神者の後ろをついて従うほど、審神者に依存するようなことはなかった。
だが今宵、長谷部は審神者の布団の隣に布団を敷いて、添い寝をしてもらっている。
同室の刀剣男士が突然いなくなってしまったことに、動揺を隠せないのだ。
亡くなった彼と長谷部は、不器用ながら少しずつ距離を縮め、いつか一緒に笑い合う仲になった。そんな相棒ともいえる存在の喪失が、長谷部を知らず知らずのうちに蝕んでいる。
審神者は長谷部に何もできない。
だからこうして同衾を許し、長谷部の背を撫でている。
長谷部の背の脂肪は薄く、ごつごつとした肩甲骨の感触を感じることができる。
審神者の命とあればどれほど疲れていようと笑顔で仕事をこなし、戦場では数多の敵を屠ってきたへし切長谷部。
そんな長谷部が、赤子のように頬を審神者に摺り寄せ、甘えてくる。
その仕草がどうにも、審神者にとっていとおしく、そして悲しかった。
2021年5月15日
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